平日の陽が少し陰り出したころ、仕事で渋谷に出向いた帰りに、駒場東大前に立ち寄りました。行く先は中にある生協書籍部。守衛室に立ち寄り、時計台を見上げながら校門をくぐりました。その古めかしい佇まいとデジタル化されていない学生の立て看は、昔も今も変わっていません。
キャンパス内にある銀杏並木は、今年の温かい秋のせいか、黄色い落ち葉もまだちらほら。頭の中にはほぼ反射的に「枯葉」のメロディーが流れます。やがてそれが絨毯のように敷き詰められるまでは、この先も鳴り響くことになるでしょう。
この銀杏並木を東の方にずっと歩いて行くと、東大生協の真新しい建物に行き当たります。ここは確か昔は鬱蒼とした木々に囲まれた駒場寮があったところのような気がします。ところどころに蔦が絡んでいる、染みだらけの灰色の建物の中は、当時の学生たちの夢がいっぱい詰まっていたに違いありません。
この建物の中にある書籍部の入り口を入ってみました。まずアルコールによる手の消毒をし、モニターを覗き込んで体温を確かめます。そして、店内を眺め渡しました。
そしたら、何とすぐ目の前に見慣れた本の表紙がありました。どう見ても、特等席です。しかもポップまで添えてあります。ここまでしてもらっていいのでしょうか。すぐさま店員さんに店長の足立裕太さんを呼んで頂き、丁重にお礼を述べました。感謝の気持ちで胸がいっぱいでした。
事の発端は、何かでこの書籍部のお問い合わせ先のメールアドレスを見つけたことでした。そして厚かましく本を置かせて頂けないかと、新潮社のホームページと自分のホームページを貼り付けて送ったところ、足立さんから意外と好意的な返事を頂き、とんとん拍子に話が進みました。本を置いてもらえるということだけで嬉しかったのですが、まさかの演出でした。これから可能な限り、本はここで買おうと決めました。
そしてさっそく買ったのが、岡崎武志さん編による野呂邦暢の『愛についてのデッサン』。ちょうど12月4日の岡崎さんによる新潮講座の課題図書になっていて、どこかで買おうと思っていたところでした。
さて、ここまではいい話なのですが、問題はこれからです。いつ行っても売れ残っている本を見ることになるのか、それともどこかの誰かに買って頂けることになるのか。
みなさんはどちらに賭けますか?
この賭けも負けのようです><