先週、「民藝の100年」を見に行ってきました。
副題は、柳宗悦没後60年記念展。お目当ての一つは、展示されているウインザーチェアを見ることでした。この、重厚感はあっても華美ではない椅子については、小林秀雄に学ぶ塾の 同人誌『好*信*楽』に寄稿したことがあります。
冒頭の写真は、今でも小林秀雄氏が坐っていた温もりを伝える、鎌倉の山の上の家にあるその椅子です。この文章の中で、私は志賀直哉との関連で、この椅子を小林氏は知っていて買ったのではないかと推測していました。ところが、最近読んだ、若松英輔さんの「小林秀雄 美しい花」を読むと、そうではなく、小林氏は柳宗悦との関係の方が強いということを教わりました。というのは、柳の甥である石丸重治が小林氏と中学校の同期で同人誌『青銅時代』を発行していて、その中の小林氏の小説を、柳が志賀に『改造』とかの雑誌に紹介してもらえないかと依頼する手紙が残っているからです。
さて、展示されていたウィンザーチェアですが、私が見た限りでは、形だけではなく、材料に使われているイチイとニレの木の風合いと古び具合から、鎌倉にあるものと同じ時期に同じ職人が作ったものであるように感じました(以下のHPに写真が掲載されていましたが、現在は展示会終了に付き、写真はありません)。
そして、このウィンザーチェアは、柳が浜田庄司と1929年にイギリスに行った際に大量に買い付けたとの説明がありました。小林氏がこの椅子を買い求めたのは1949年。20年の間に新たに買い付けられた可能性は否定できませんが、いずれにしても、小林氏がこの、柳が見初めた椅子を買ったのは偶然ではないでしょう。
その他にも、陶磁器や染織など満載のこの展示会、2月13日まで行われていますので、ご興味がおありの方は、ぜひ足をお運びください。
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