感想文18

 『人生の花火』、楽しく拝読致しました。幾度も挫折に遇ひつつも、花火を撮る写真家といふ道を見出してゆく悠二の生き様が、印象に残りました。  

 私のやうな平成生まれの人間の多くは、人生如何に失敗をせずに、効率的に目標に向かつて突き進むか、といふことばかりを無意識に考へてしまつてゐるやうに思ひます。一方で悠二の生き様は「スマート」ではありません。病ひや、後で思ひ返せば惜しくてたまらぬ恋人との別れなど、上手く行かなないことで溢れてゐます。現代ですと、これらの困難を「克服して」、「バネにして」成し遂げた云々が、良しとされさうですが、悠二の人生はさういふものでも無ささうです。悠二がぶつかつた困難は、悠二のその後の人生にまでずつと響き続けます。しかしそれこそが、悠二の人生を味はひ深いものにしてゐるのではないでせうか。  現代人の、困難を「乗り越へよう」とする思考は、ともすればそれら困難が恥づかしいものであり、人生に無かつたものにしてやらうといふ願望の表れであるのかもしれません。しかし冨部さんのお書きになつた『人生の花火』を読みますと、挫折も人生を彩る大切な一部なのだと、気がつかされる気が致します。  


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希望と、追憶と、ひとつの小説。 小説を読まなくなって久しいのですが、今回の「人生の花火」は久々に興味をもって読んだ小説です。  花火や写真?という印象を持ちながら、読み進みましたが、青春譚として充分楽しめる物語になっていました。読んでいるうちにエピソードの多彩な展開についつい引き込まれていきます。実在の花火写真家の人生にモチーフを得た小説ですが、ドキュメンタリーではなく、作者の創作作品と言えます。

先日はご著書をご恵投くださり、誠にありがとうございました。 また、文学フリマにもお越しいただいたと伺いました。誠にありがとうございました。 ご著書を拝読いたしまして、お恥ずかしながら金武さんのことを初めて知りましたが、その背景にある人生と、鮮やかな花火のコントラストに驚くとともに、読み終わった後は心揺さぶられる思いでした。 いただいたご著書は部室に保管し、会員で共有させていただきます。 ご著書が駒

「人生の花火」感想 構想から17年かけて完成したという冨部久志君の「人生の花火」。 「私が経験したことだけでなく、作者・冨部久志さんの半生も織り交ぜた二人のハイブリッド小説です」 モデルとなった写真家・金武武氏が後書きで書かれている通り、この小説は写真家の人生と若き日の作者を巡るエピソードが、創作という舞台の上で展開していく作品である。故に、ドキュメンタリーではなく、事実と創作を取り混ぜた冨部久志