感想文19

希望と、追憶と、ひとつの小説。


 小説を読まなくなって久しいのですが、今回の「人生の花火」は久々に興味をもって読んだ小説です。  花火や写真?という印象を持ちながら、読み進みましたが、青春譚として充分楽しめる物語になっていました。読んでいるうちにエピソードの多彩な展開についつい引き込まれていきます。実在の花火写真家の人生にモチーフを得た小説ですが、ドキュメンタリーではなく、作者の創作作品と言えます。花火や写真に積極的な興味を持つ人以外にも、ぜひ読んでいただきたい作品です。  小林秀雄を敬愛する1955年生まれの作者は、「これは文学作品という立ち位置を意識して書いたものではなく、今生きている若い人たちにこそ読んでもらいたい作品です」と発言しています。  生きる事の意味や人生の苦しみと美しさが、かつて作者や写真家の人生の中にいた、若く魅力的な女性や愛する友人たちなどを通じて、浮き彫りになっていきます。  当時と同じ視線を意識的に保ちながら、物語はさまざまな経験や人との出会いを読者に語りかけます。  この小説はおそらく「こころの奥にある、若き日の想い出にさようならをするために」書かれたのではないかと私は感じています。  その長い道のりの果てに、人生の秘密が徐々に解き明かされていくところが、この小説の魅力です。

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『人生の花火』、楽しく拝読致しました。幾度も挫折に遇ひつつも、花火を撮る写真家といふ道を見出してゆく悠二の生き様が、印象に残りました。 私のやうな平成生まれの人間の多くは、人生如何に失敗をせずに、効率的に目標に向かつて突き進むか、といふことばかりを無意識に考へてしまつてゐるやうに思ひます。一方で悠二の生き様は「スマート」ではありません。病ひや、後で思ひ返せば惜しくてたまらぬ恋人との別れなど、上手く

先日はご著書をご恵投くださり、誠にありがとうございました。 また、文学フリマにもお越しいただいたと伺いました。誠にありがとうございました。 ご著書を拝読いたしまして、お恥ずかしながら金武さんのことを初めて知りましたが、その背景にある人生と、鮮やかな花火のコントラストに驚くとともに、読み終わった後は心揺さぶられる思いでした。 いただいたご著書は部室に保管し、会員で共有させていただきます。 ご著書が駒

「人生の花火」感想 構想から17年かけて完成したという冨部久志君の「人生の花火」。 「私が経験したことだけでなく、作者・冨部久志さんの半生も織り交ぜた二人のハイブリッド小説です」 モデルとなった写真家・金武武氏が後書きで書かれている通り、この小説は写真家の人生と若き日の作者を巡るエピソードが、創作という舞台の上で展開していく作品である。故に、ドキュメンタリーではなく、事実と創作を取り混ぜた冨部久志