top of page

感想文19

更新日:2023年7月13日


 小説を読まなくなって久しいのですが、今回の「人生の花火」は久々に興味をもって読んだ小説です。  花火や写真?という印象を持ちながら、読み進みましたが、青春譚として充分楽しめる物語になっていました。読んでいるうちにエピソードの多彩な展開についつい引き込まれていきます。実在の花火写真家の人生にモチーフを得た小説ですが、ドキュメンタリーではなく、作者の創作作品と言えます。花火や写真に積極的な興味を持つ人以外にも、ぜひ読んでいただきたい作品です。  小林秀雄を敬愛する1955年生まれの作者は、「これは文学作品という立ち位置を意識して書いたものではなく、今生きている若い人たちにこそ読んでもらいたい作品です」と発言しています。  生きる事の意味や人生の苦しみと美しさが、かつて作者や写真家の人生の中にいた、若く魅力的な女性や愛する友人たちなどを通じて、浮き彫りになっていきます。  当時と同じ視線を意識的に保ちながら、物語はさまざまな経験や人との出会いを読者に語りかけます。  この小説はおそらく「こころの奥にある、若き日の想い出にさようならをするために」書かれたのではないかと私は感じています。  その長い道のりの果てに、人生の秘密が徐々に解き明かされていくところが、この小説の魅力です。

閲覧数:49回1件のコメント

最新記事

すべて表示

感想文27

このたび、「人生の花火」を拝読し、感動いたしました。 登場人物の心理描写が私にはとてもしっくりくる感じがして、「そうだよな」「なるほど、そう思うよな」という風に、登場人物(悠二)に一つ一つ共感しながら読むことができました。井上靖の作品(しろばんば 等)を読んだ時のように、自分の心にピッタリとくる言葉を次々と提供してくれているような感じを、読みながらずっと受けておりました。 中でも一番印象に残ってい

感想文26

ことのほか厳しい暑さが続いている八月も、もうすぐ終わろうとしています。 過日は長編小説『人生の花火』をお贈り頂きまして、心よりお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。とても読み応えがあり、私も悠二達の過ごした頃に引き込まれて行き、そこかしこに冨部さんの執筆への熱い想いが伝わってきて感動いたしました。 私たちの人生・社会も決して順調に、思い通りになるものではありません。背負い切れない艱難が

感想文25

『 人生の花火 』読み終えました。ひさびさの一気読みです。 冨部久志さんの文章がなにより素晴らしい。読ませる! 金武 武さんをモデルとした主人公の「現代的」生き方に最終的に共感し、著者である冨部さんの取材力と真摯な執筆態度にもエールを送りたいです。 青春を描いた本として読みつがれることを期待してます。装幀もいいです。各所にあしらわれた花火の写真も素晴らしい。 PASSAGEbi

bottom of page