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九尾

感想文28

更新日:2024年12月3日

『人生の花火』〜光と闇とあの日の恋〜 こんにちは。『人生の花火』拝読させて頂きました。

早速ですが、感想文をお送りさせて頂きますね。


学生時代の金武さん(悠二)の、喘息やアレルギー疾患に苦しむ様子や

療養所生活での鬱々とした日々や親友の死

異性への思慕や実らぬ恋心といった、言わば闇の部分と、

専門学校時代にできた恋人との楽しい日々や花火との出会いといった光の部分との対比が

グラデーションのように描かれているなと感じました。


それにしても、1人の人間に惚れ込み、その人の自伝小説を描こうと想い立ち、

それを実現してしまう行動力に脱帽です。

ここまで惚れ込んだ理由、冨部さんのなかでなぜこうまで金武さんの花火が炸裂したのか、

そこも面白い部分だなと思いました。


金武さんにヒアリングしながら描いたのだと思いますが、

そのヒアリングで聴き出す力もすごいなと思ったことの一つです。

友達関係のことや起こった出来事だけでなく、その友に対して抱いていた感情や

出来事に対してどう感じていたか、の気持ちの部分が丁寧に描かれているなと思いました。


さらに、風景描写が丁寧に描かれていることで、友達の家の中の様子や、療養所生活の場面など、

映像を観ているかのように思い浮かべながら読むことが出来ました。

実際に、足を運んで見に行ってきたのでしょうか?

木質感や塗装の艶感までも伝わり、さすが材木屋だと関心しきりでした(笑)

タイムスリップして学生時代の金武さん(悠二)を見に行ってきたのかもしれませんね!


そして、写真家になってからの悠二の側にいる宮部さんは、

間違いなく富部さんだ!と思いながら楽しく読ませて頂きました。


何となく、恋人ができるまでの日々と、花火が打ち上がった後にヒョロヒョロと

線のようになって上空まで上がっていくまでがリンクし、

恋人ができた日々が、花火が開いた瞬間とリンクしているように思えました。


人生の転機となった女性との日々や花火への情熱を見つけた瞬間は、この小説の美しい花火そのものですね。


恋人との別れや、働き出してから発症した皮膚アレルギーの辛さなど、

花火が萎んで消えていく感じとも重なりましたが、

将来の伴侶との出会いや、宮部さんらの登場で、

新たな花火がボンッ、ボンっと打ち上がっていく様子も描かれていて、

人生良いこともあれば悪いこともある、山あり谷あり、闇あれば光あり

そういったバランスが取れていつつも、軸や芯に花火があるからでしょうか

常に明るさを感じる読了感でした。


花火写真家の人生を追体験しながら、心の目で人生の花火を何度も観たような気がします。

悠二が追い求めた光にはいつも希望があり、そこに冨部さんの琴線が触れ、

スパークした結果なのだなと感じました。良き小説をありがとうございました。


閲覧数:19回1件のコメント

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1 Comment


Hisashi Tomibe
Hisashi Tomibe
Dec 03, 2024

九尾さん、

 

 お忙しい中、長い小説を読んで頂いただけでなく、作者として読者にこういう風に感じてもらえたならと願っていた、まさにそのような感想文を頂き、大変うれしく思っています。

 この小説を書くことになった動機は、作者のブログの「事の発端(2)」をご覧いただくと、ある程度詳しく書いてありますが、今から23年前、写真雑誌のインタビュー記事の書き起こしをやったことが始まりです。当時は私も四十代、このまま会社員生活を続けていっていいのかという迷いもあった時期で、様々な困難と闘いながらも自分の好きな道を貫こうとする金武さんの生き方に鼓舞され、そして、その中で数々のエピソードが余りにも波乱万丈なので、この話を小説にしたい、そうして多くの人に読んでもらいたいという思いが炸裂したのでした。

 ヒアリングについては、花火のセミナーや実際に花火大会に行きながら、二~三年かけて五回行い、その間、分からないことがあれば質問したりして取材ノートのようなものを完成させました。ただ、そういったエピソードの羅列だと物語にならないし、臨場感も伝わらないので、そこは私の経験も踏まえた想像を駆使して描きました。

 ところで、私はその後も会社員生活をずるずると続けて今に至りますが、九尾さんは若いうちに会社員生活を辞め、自分が好きな、自然素材を用いたモノづくりを始められたのですよね。対象は違いますが、金武さんと同じく、自分の好きな道を貫こうとしておられるのだと感じています。その九尾さんの物語が、この先どう紡ぎ出されていくのか、期待とともに見守りたいと思います。

 九尾さんならどんな困難にも打ち克っていけると信じていますので、頑張ってください! 

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