top of page

『ゆきてかへらぬ』映画化について(67)

執筆者の写真: Hisashi TomibeHisashi Tomibe
TOHOシネマ六本木にて
TOHOシネマ六本木にて

 1月30日(木)に舞台挨拶付き『ゆきてかへらぬ』の上映会に行ってきました。公式サイトは以下になります。

 『ゆきてかへらぬ』は中原中也、そして小林秀雄と深い関係があった長谷川泰子による口述を、村上護がまとめ、1974年、私が19歳の時に出版された本のタイトルでもあります。当時、私は小林秀雄全集を夢中で読んでいて、その延長でこの本も買い求めました。男女の心の機微もまだまだ分かっていない私でしたが、それでも三人の極端な愛憎劇には心を刺されました。

        映画を観終えたあと、久しぶりに紐解いてみました

 

 それから50年経った昨年、この本を原作とした映画が翌年早々に公開されることを知りました。長年、小林秀雄を読んできた私としては、観るのを楽しみにしながらも、著名な詩人と批評家の男女関係のもつれをただ表面的に扱っている作品だったらどうしようかと、内心不安に思うところが無きにしもあらず、でした。日ごろ小林秀雄の作品について教わっている池田雅延先生もこの映画について話題にされ、「観るのは皆さんの自由ですが、小林秀雄と中原中也の関係については、まず小林秀雄の『中原中也の思い出』を読んで下さい」と言われました。

 さて、この映画を観た感想です。細かく言えば、首をかしげざるを得ないシーンもありましたが、基本的には大変感銘を受けました。脚本家である田中陽造は、『中原中也の思い出』もしっかりと読んでいたに違いありません。実はこの脚本は小林秀雄が亡くなった四十年前に既に出来上がっていたそうです。そして、長い間、日の目を見なかったこの脚本を、小説が原作である映画を数多く撮ってきた根岸吉太郎監督を中心に、制作に携わったすべての関係者が、見事に映像化してくれました。

 広瀬すずや岡田将生などの人気若手俳優の配役について、異を唱える人もいるかもしれませんが、逆に、それが呼び水となってこの映画を観に行き、そのあと中原中也や小林秀雄の作品にも触れてみたという若い人たちが、この先、少なからず増えることを密かに願っています。

閲覧数:2回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


小説『人生の花火』との対話

購読登録フォーム

送信ありがとうございました

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

©2020 by 小説『人生の花火』

bottom of page