少し前、一泊二日で伊豆修禅寺に行って来ました。
まずは広大な面積を誇る虹の郷を訪れました。天気も良く、少し汗ばむくらいの陽気で、富士山もすっきりとした顔を見せ、出迎えてくれました。
園内は各種の花が満開。中でも色とりどりのバラの花が美しく咲き誇っていました。
そして、何故か夏目漱石記念館なるものがあり、中に入ってみました。これは明治時代に漱石が滞在した菊屋旅館の部屋をそのまま移築したものだそうです。確かに、時を飛び超えたような不思議な空間でした。
宿泊はその菊屋旅館。中は迷路のように入り組んでいて、温泉に入って部屋に戻ろうと思っても、なかなか辿り着けませんでした。ふらふらと歩いていると、夏目漱石の写真が目に入りました。漱石は患っていた胃潰瘍の転地療養のためここを訪れましたが、すぐに大量の血を吐き、病状が悪化してここで長い闘病生活を送ることになってしまったとのことです。
さて、食事の前に近所を散策。修禅寺や日枝神社、眺望の良いカフェなど、見どころ満載でした。
クライマックスは何と言っても蛍。その光跡を目で追ったのは、恐らく五十年ぶりくらいでしょうか。暗闇の中で揺蕩うその儚い光は、ずっと見ていても飽きません。少し前に読んだ『源氏物語』の蛍の章では、源氏が集めた蛍を解き放ち、ほのかな光に浮かぶ玉鬘の姿を宮に見せるというシーンがありましたが、何匹も飛んでいる個所でもすぐそばにある草木が浮かび上がることはなく、あれは恐らく単なる文学的な描写だと思って、のちに「源氏物語」の素読会のメンバーに語ったところ、「いや、昔は電灯などなく、ろうそくの暗い光で人々は生活していたので、現代人とは視力が違っていて、暗くても確かに玉鬘の姿は見えたのではないか」という発言があり、今の観点でしかものを見ることができなかった自分を反省しました。
さて、翌日は中伊豆ワイナリーへ。高原の平らかなところにあるそのブドウ畑は温泉街とは一変、何やらヨーロッパの風景のような趣です。ここで食事をして、帰途につきました。
修禅寺駅に戻る途中、風変わりな書店を見付けました。表の扉に木の輪切りが貼ってあります。中に入って店主に話を聞くと、二階にはギャラリーもあり、読書会などのイベントもやっていて、さらには出版も行っているとのこと。記念にと思い買った本が『修禅寺物語』。『半七捕物帳』で有名な岡本綺堂が書いた作です。そう言えば、修善寺の宝物館には表紙になっている頼家の面が納められていました。この面には様々なおどろおどろしい伝説がありますが、私にとっては、また修禅寺に来てくださいと語りかけてくれている面です。いつの日か、再訪することを楽しみにしています。
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