top of page
  • 執筆者の写真Hisashi Tomibe

い぀か王寺駅で(28)

曎新日2022幎4月18日


 䞉月の岡厎歊志さんによる新朮講座は、堀江敏幞の「い぀か王子駅で」を題材にした、郜電沿線を巡る文孊散歩でした。

 たずは、モノレヌルに乗っお飛鳥山に登りたした。ケヌブルカヌではないこのモノレヌルは、2009幎に運行を開始したずいう事ですが、2001幎に刊行されたこの小説の䞭には矜田に向かう東京モノレヌルの話が出おいお、それから8幎埌に王子駅にもモノレヌルが出来るずいう事を堀江さんは予芋しおいたのでしょうか

 さらに、この小説には私にずっお倧きな驚きが二぀ありたした。

ひず぀は、「スヌホの癜い銬」ずいう絵本の話が出おくるずころです。


 2000幎の暮れに起こった䞖田谷事件の関係者である入江杏さんは、被害者のにいなさんがこの絵本を題材にしお描いおいた絵を、2001幎のお葬匏の時に枡され、しばらくは悲しみず共にしたっおおかれたすが、やがお額に入れお残そうず思った時に、心の䞭でプラスの倉化が生じたす。詳しくは、入江さん著の「悲しみを生きる力に」を読んで頂きたいず思いたすが、自分ずしおも倧倉思い入れのある絵本が描かれおいたこず、しかもそれがほが同時期に、堀江さんず入江さんずの間で取り䞊げられおいたこずが驚きでした。

 もうひず぀は、そう、テンポむントの話です。


 孊生時代に友人から競銬の手ほどきを受けたあず、ビギナヌズラックも盞䌎っお、競銬に倢䞭になっおいた二十歳過ぎ、この銬の摩蚶䞍思議な生い立ち、その埌の栄光、そしお悲劇に芋舞われた話は、ストヌリヌで読たせるよく出来た小説以䞊の話だず感じおいたしたが、圓時を思い出しおたた䞀頻り胞が詰たりたした。レヌス䞭に骚折したこの銬が、手厚い看護を受けおいるずいう報道ずその容態に䞀喜䞀憂しおいたあの頃、堀江さんも同じような気持ちを抱いおいたのだず考えるず、同じ競銬ファンずしおの芪近感を芚えたした。

 いや、ちょっず埅った

 堀江さんは1964幎生たれですから、1976幎だずただ小孊生。その時にテンポむントず同時代に掻躍したグリヌングラスの単勝を圓おお、デンオンのプリメむンアンプを買ったずいう゚ピ゜ヌドず蟻耄が合わないではないか いやいや、これは䞻人公ず堀江さんを混同するから合わないず思うのであっお、もちろん小説はフィクションなのだから、そう考えれば䜕の䞍思議もない話ですが、もしこれを自分が曞くずなるず、私は有銬蚘念でカブトシロヌの単勝を取ったずいう話になるわけで、寺山修叞を倚少読んでいるからずいっお簡単にできる芞圓ではなく、やはり、小孊生の頃から競銬を嗜んでいたか、あるいは近しい人に競銬を教わっおいたず芋るべきでしょう。

 そしお物語の根底を流れる、䞋町における人情の味わい。最埌たで謎を秘めた正吉さんに぀いおは、予備校時代に䜏んでいた江東区の森䞋の銭湯でよく芋掛けた、筋肉隆々の䜓に入れ墚の花が咲いおいた初老の男性を思い出したした。この小説の人情噺も、やはり䞋町にどっぷりず浞っお実際にその䜏人達ずの深い亀流がなかったら、描く事はできなかったのではないかず思いたしたが、岡厎さんが投げ掛けた、この䞻人公には名前がないずいう疑問の意味するずころが、この小説の謎の䞭に深く入り蟌んでいるような気がしたす。尀も、小説の䞭の出来事で、どれが本圓にあったこずで、どれがそうではないずいうようなこずは、本質的な問題ではないでしょうが。

 さお、元に戻っお、肝心の文孊散歩は、王子駅前からスタヌトしおモノレヌルで飛鳥山桜の名所でもあるを登り、


レヌルのリサむクルによっお造られた飛鳥山䞋跚線人道橋を枡っお、


郜電に乗り、あらかわ遊園珟圚工事䞭に぀き䌑園、


吉村昭蚘念文孊通図曞通、カフェも䜵蚭されおいる、


梶原曞店昚幎閉店。店䞻の息子さんは、䜕ずギャロップダむナやメリヌナむスで勝ち鞍をあげた根本階手などを巡っお、


終点の䞉ノ茪駅未だにあるホヌロヌ看板が、䞞い電球照明ずずもにレトロな雰囲気を醞し出しおいるぞずいうルヌトでした。

 今回は倩気予報から雚は降らないず思っおいたのに、最埌はやはり雚に芋舞われたあずこの文孊散歩では、なぜか倧雚や倧雪に出䌚う確率が高い、打ち䞊げ䌚に突入。文孊、歎史、芞胜ず幅広いゞャンルに粟通した岡厎さんならではの、楜しくたた有益だった講座の最埌に盞応しいフィナヌレの花火が、雚暡様の空に䜕発も打ち䞊がりたした。  ただ、今埌も新朮講座ずは別に「新オカタケ散歩」は続きそうなので、その行く先を楜しみにしお埅ちたいず思いたす。

閲芧数100回0件のコメント

最新蚘事

すべお衚瀺
bottom of page