
吉屋さんは以前に『青空の憂鬱』という、ゴッホの全足跡をたどる旅の本を出版されていますが、そのあと約二十年間、さらに調査と考察を重ねられ、このたび『ゴッホ 麦畑の秘密』という本を筑摩書房から上梓されました。その出版記念会が三月七日にプレスセンターであり、私も末席で参加させて頂きました。

左の写真は満席の会場でスピーチを行う吉屋さん。右の写真は、お祝いのスピーチを行っている、洛北高校の先輩で建築家の今井秀明さんとMusic Commuterの原聡美さんで、下が吉屋さん。吉屋さんは三年ほど前、今井さんに紹介して頂きました。
実はこの出版記念会の前にアマゾンでこの本を買って読了しており、五つ星の評価とともにレビューを書いております。 ゴッホ 麦畑の秘密 (筑摩選書 0295) | 吉屋 敬 |本 | 通販 | Amazon
(レビューはページのかなり下の方にあります)
ゴッホの生涯をこの本を通じて読むと、学業の失敗、失恋、弟のテオなどを除いた家族や親戚との断絶、絵画の恩師や画家仲間との決裂、そして後年激しさを増す精神疾患など、不幸の連続のように思えましたが、吉屋さんは、「これ以上幸せな画家はいないと思えるほど恵まれた画家がゴッホなのだ」と断言されています。なかなかそうは思えないのに、どうしてだろうとあれこれ考えましたが、これについては、ゴッホが印象派や浮世絵などの影響を受けながらも、独自の絵画を発展させていったその自信と喜びを、それぞれの絵から、同じ画家として吉屋さんは全身全霊で感じ取られているからではないかと想像しました。
実は私もゴッホの絵は好きで、さらに小林秀雄の「ゴッホの手紙」を若い頃に読んでその生涯に興味を持っていたこともあり、新婚旅行はアルルやサンレミやオベールなどを訪れ、ゴッホとテオが眠るお墓に手を合わせてきました。

上の写真はオベールの教会があるところで、左側にはゴッホとテオが眠る墓地があり、右側にはゴッホが描いた麦畑があった場所が広がっています。下の写真はゴッホが耳を切ったあとに入院していたアルルの市立病院の中庭。どちらも当時の面影がそのまま残っていました。
レビューの繰り返しになりますが、生涯を通じてゴッホと向き合ってこられた吉屋敬さんの『ゴッホ 麦畑の秘密』は、ゴッホに興味のある方々にはぜひとも読んで頂きたい一冊です。
冨部さんの私の著書に対する感想を読ませていただきました。著者の考えというかゴッホへの情熱を、しっかりと受け止められている読後感に感動しました。冨部さんが書かれた「人生の花火との対話」にもあるように、一つのことに執着する人に対する冨部さんの執着や感動自体が、すでに著者と同じ目で対象を眺めている…。そのことに著者自身が大きな感動を覚えました。