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大坂夏の陣(48)

更新日:2023年9月13日


 展示ブースの様子。電灯がアクリル板に反射して、花火写真がうまく撮れませんでした。


 去る九月十日(日)の残暑厳しい折、文学フリマ大阪に再出店しました。去年は自分の小説だけでも五冊売れたので、半額で販売する今年はもっと売れるのではないかと期待していたのですが・・・。

 会場に着いてテーブルの飾り立てをしながら、ふと、隣のブースを見ると、その前に早くも行列が出来ていました。揃いのTシャツを着た男性一人女性三人が、慌ただしく黄色い本を並べています。その時には気付かなかったのですが、男性はどこかで見た顔でもあり、誰だろうと思って出店者カタログを繰ってみると、なんと万城目学さんでした。

          扉の後ろにも列は延々と続いています。


 彼の小説の「鴨川ホルモー」「鹿男あをによし」「プリンセス トヨトミ」などは読んでいて、主に関西が舞台であることから、森見登美彦同様、親近感を持っていました。しかし、この会場では強力なライバルです。というか、こちらは箸にも棒にも引っ掛からない素人、結果は目に見えています。案の定、隣で本を買った人はにこにこしながら、私のテーブルには見向きもせず歩き去って行きます。いや、中には金武さんの花火写真に目を留めて近付いて来る人もいました。待ってましたとばかり、写真の説明と小説を書いたいきさつを話し、読んで頂いた方にはおおむね好評であること、特価で販売していることなどを申し立てると、興味深い顔はするものの、殆どの人はそのまま立ち去って行きます。一方、隣のテーブルの前は人波が途切れず、本は飛ぶように売れています。わざわざ並ぶ気はなかったのですが、開場後二時間ほどしたら、その長蛇の列も無くなってきたので、これも何かの縁と思って本を買い、やがて完売したあとはサインまで頂きました(サインは完売後という掲示あり)。



 二言三言、立ち話をしましたが、この普通に優しそうな表情を持つ頭から、あの途方もない小説の構想が生まれてくるのかと思うと、不思議な感じがしました。そうして、三時過ぎには撤収されましたが、そのあとも、こちらの売れ行きは変わらず、むしろ人通りは寂しくなってしまいました。暇に任せて競馬新聞を読んでいたら、隣で出店していた女性に声を掛けられました。競馬で負けて自殺する男の短編小説を実験的に書いたが、競馬はやったことはないので、おかしいところはないか教えて欲しいと言って、プリントを渡されました。あらすじはこうです。

 主人公は長年の競馬で借金が三百万円くらいあったが、桜花賞で五十万円ほど勝ったので、運が向いてきたと思って、借金を帳消しにするためさらに三百万円を借金し、有馬記念2着、前走の阪神大賞典1着のリンカーンの天皇賞に賭けた。単勝2.2倍、絶対の自信があったが、13着に敗れてしまった。そこで今までの自分の人生を振り返り、「情けない人生だった!」と叫んで海の底に沈んでいく・・・。

 おかしくはないけれども、桜花賞で五十万円勝つのではなく、逆に五十万円負けてしまい、最後の一発逆転を狙って、そこでも負けてしまうという方が、悲愴な感じが出ていいかもしれないとアドバイスしました。

 そうこうしているうちに、17時を迎え、敢え無く終了。結果は、私の小説三冊、石月さんの小説二冊が売れただけでした。期待より遥かに少なかったことによる徒労感。お店で客に何かを販売している人の気持ちが痛いほど分かります。いや、生活が懸かっていない分、本当に分かっているとは言えないでしょう。

 なお、文学フリマ出展だけなら、来る価値は余りありませんが、前夜と当日終了後は、大阪に住んでいる中高校時代の友達と大学時代の友達にそれぞれ会って、昔話や尿酸値などの病気の話に花を咲かせ、楽しい酒を飲むことができました。それだけでも大阪に行った価値があったと思っておきましょう。

      梅田にあるバー。カウンターが不思議な形をしていて、

      手前の入り口からは、店の人以外の顔が見えません。



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